犬と飼い主さんの縁を結ぶ場として、犬の「譲渡制度」が大きな注目を集めています。生涯のパートナーである愛犬と譲渡会で出会うという飼い主さんも増えていますが、譲渡会とはどのような場なのでしょう?神戸市動物管理センターで犬の譲渡活動を支援するボランティア団体「CCクロ」の北村美代子さんに、実際の活動などをお聞きしました。
「CCクロ」の正式名称は、「神戸市動物管理センター 譲渡事業支援ボランティアグループ 社団法人日本動物福祉協会 CCクロ」です。神戸市動物管理センターという行政機関と、保護された犬たちの譲渡事業をボランティアで支援する民間団体の私たちが「官民協働」で取り組んでいる点に特徴があります。神戸市動物管理センターでは市の職員の方々が、飼い主の事情で手放された犬や迷子になった犬、野犬などの引き取り及び保護活動を行なっています。保護された犬たちの新しい飼い主探しをおこなう譲渡事業も市の仕事のひとつです。そして、その譲渡事業を「CCクロ」が様々な面からサポートさせていただいているのです。神戸市動物管理センターでは「犬を譲ってほしい」という希望者の方に譲渡の条件を満たしておられるかどうかを確認させていただき、過去の飼育歴や現在の飼育環境の状況などを詳しくお聞きした後「犬の譲り受け申請書」を提出していただいています。これに対して「CCクロ」の活動は、保護後に譲渡される犬たちの飼養管理が中心です。例えば犬の散歩や基本的なしつけ、ブラッシングやシャンプー、犬舎の掃除などです。基本的なしつけが出来ていると、新しいご家庭でも飼っていただきやすく、飼い主さんと犬との信頼関係を深めていただくサポートにもなります。そこで、譲渡候補犬には、犬のしつけ方を学んだスタッフやボランティアが基本的なしつけや社会化トレーニングなどをおこない、譲渡後のアフターフォローも出来るように心がけています。
神戸市動物管理センターには、飼い主さんの病気や引っ越し、経済的事情などの理由で保護される犬がいます。一度は人と暮らして幸せだったはずですが、やむを得ない事情で手放された犬がほとんどです。私たちは、ここから巣立った犬には今度こそは幸せになってほしいと願っています。センターでは、平日の午前10時から午後3時までの間、どなたでも参加できる譲渡候補犬の見学時間を設けています。犬を見学後に譲り受けを希望される方には、「犬の譲り受け申請書」を提出していただきます。
申請書には、希望者の家族構成や、犬を迎え入れた後はどのような飼育ができるのかを詳細に記入していただきます。書類審査の後、市の職員と動物愛護推進員を委嘱されたCCクロスタッフ・ボランティアが分担して家庭訪問をさせていただきます。家庭訪問では、犬を飼うのに適した空間があるか、犬が快適・安全に暮らせるように室内の整理整頓はできているか、室外飼育を希望される場合は犬小屋の置き場所はあるか、日差しや雨や風をよけられる工夫が整っているかなどを確認させていただき、場合によっては助言もさせていただいています。家庭訪問の後、神戸市より譲渡決定通知書をお送りさせていただきます。通知書が届いた方には、犬の飼い方やしつけ方に関する1時間半ほどの講習会に参加していただきます。これらの過程に対して、「せっかく譲り受けるというのに、何だか面倒だな……」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、これは「最後まで責任を持って飼う」という意識を、飼い主さんに持っていただくためにも必要な過程だと私たちは考えます。譲渡会で愛犬と出会った飼い主さんが、「この子をいただいて、とても幸せです」と報告してくださったとき、私たちも本当に幸せです。譲渡の現場には、関わった方たちみんなの笑顔があふれていますね。
「(社)日本動物福祉協会CCクロ」 スタッフ。平成17年度より、神戸市動物管理センター内における譲渡事業支援ボランティアグループ「CCクロ」の活動に、ボランティアとして参加。平成19年度より、「CCクロ」のスタッフ(社・日本動物福祉協会職員)となり、現在に至る。なお団体名の"CC"とは"シティーセンター"の頭文字。"クロ"は神戸市動物管理センターに保護され、その後、しつけの指導モデル犬として活躍した犬の名前が由来となっている。